ステップ [重松 清の本]
内容(「BOOK」データベースより)
これはとてもお気に入りの一冊になりそう。
妻を亡くし、男手一つで一人娘、美紀とともに、父子が周りの人々に助けられながら成長していく
物語だ。
初登園にはじまり、章ごとに5歳、小1、小2、小3、小4、小5、小6、と美紀ちゃんが大きくなっていく
構成である。
はじめは、独特の表現シゲマツ節にやや飽きてきた感もあり、なかなか引き込まれなかったのだが、
小3あたりから涙腺がゆるみはじめあとはもうグイグイと引き込まれていった。
この作品のテーマはずばり「いのち」であろうかと思う。
主人公の健一はしばしば自分に問いかける。
妻の死について。美紀が中学生になる頃振り返って考える。
「悲しみや寂しさは消し去ったりのりこえたりするものではなく、付き合っていくものなのだ。
中略~朋子が僕にのこしてくれた中で最もたいせつなものは、むしろ悲しみだったのかもしれない。
中略~そこから力をもらってきたのかもしれない。だとすれば僕が男手一つで美紀を育てたの
というのはうそだ。朋子もずっと、一緒に美紀を育ててくれたのだ・・・・・」
「つらい思い出に触れるたびに人は優しくなっていく、そういうものかもしれない」
私には長女と長男がいるが、その間の子をひとりお空に帰している。
その時の悲しみは思い出す度胸が締め付けられる思いだが、いつもその子に心ではなしかける。
「ありがとう」って。
あなたのおかげで人の痛みがわかる人間になれたって。
世間一般でいう元気で社交的な好ましいママではないけれど、人の痛みや悲しみが想像できる優し
い人間でありたい、と思う。
「バトン」(美紀小5)の項ではその重さを命の重さにたとえて書かれていたが、
生きるとは、人生とはまさに命のバトンを引き継ぐことではないか。
それは必ずしも子孫を残すことというだけではなくて、自分のもつありったけのもの、
能力を誰かのために注いで、そうしてバトンを渡し、引き継いだものもまた同じように誰かのために
注ぐ・・・・
バトンの持つ重みは命をつなぐ重みだ。そんなことを考えた。
そしてラストのほうで健一は再婚する。
これは美紀にとってとてつもない試練だったろうと思う。
親はいつでも子どもにとって親のままであってほしいものだ。
たとえ自分勝手な願いであったとしても、父親、母親には男、女であるところを見たくない。
そういうものだ。
特に思春期にさしかかる美紀にとっては体が拒絶反応をするほど、苦しいものだった。
ずっと男手一つで育ててほしかったなぁ。
勝手な願いではあるが。
これから先、再婚相手であるナナさんは健一との赤ちゃんを生むかもしれない。
美紀にはおじいちゃんとの別れのあとに、遠からずおばあちゃんとの別れもやってくるだろう。
また心が揺れることが、これからも何度もやってくるでしょう。
けれどもたくさん悲しい思いをしたぶん優しい子に育つのでしょう。
そんな美紀のその後のおはなしも読んでみたいなぁと思わせる作品であった。
ノリさんの解説を読んだら『ステップ』も読んでみたくなりました。美紀ちゃんの年齢がうちの子供達の構成よりも若いため、イマイチ気が乗らずに何となく読まずにここまで来てしまいました。
日本に帰ったら、重松作品をもっと読みたいと思います。
by Sanchai (2010-06-05 23:23)
Sanchaiさん、ありがとうございます。とても思い入れて書いた記事に
興味をもっていただいて嬉しいです^^
うちは娘がまさに美紀ちゃんに重なってかなり共感できました。
でも、女性目線ですので、是非男性として読まれた感想をお聞きしたいです。
楽しみにしています。
by ノリ (2010-06-06 21:33)