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破線のマリス [その他の本]


破線のマリス

破線のマリス

  • 作者: 野沢 尚
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/09
  • メディア: 単行本
出版社/著者からの内容紹介
第43回江戸川乱歩賞受賞作。
テレビ報道の内幕を抉るサスペンス最高傑作!

首都テレビ報道局のニュース映像編集ウーマン、遠藤瑶子。彼女は、客観的な真実などこの世に存在しない、映像を操る者の主観的真実こそが視聴者を動かすのだと言う信念を持つ。報道被害すれすれの巧みな映像モンタージュを繰り返す瑶子のことを報道局の上司は苦々しく思っていたが、その映像編集が番組の視聴率を上げているのも事実だった。
ある日、瑶子は春名と名乗る郵政官僚から内部告発のビデオテープを受け取る。先日の弁護士転落事故は、実は郵政省内の汚職に絡んだ殺人だという内容だった。瑶子はこのテープをいつものように編集し、上司のチェックをかいくぐって放送したが、その中で「犯人扱いされた」として麻生という郵政官僚が首都テレビに抗議にやってきた。
彼は何者かに弁護士殺しの罪を着せられたのだと主張する。調べれば、春名は郵政省に存在しない人間だった。真実はどこに存在するのか?瑶子は少しずつ自らの罠にはまっていく。

記念すべき100記事目は野沢 尚氏の10年ほどまえに書かれた作品。

今読んでも少しも色あせてなく、それどころかTVのやらせ・捏造問題で騒がれている今を

見透かしたような内容に驚きを覚えた。

まさに今読むのがタイムリーな作品。

内容はミステリーというよりは警告だ。

謎解きはあるが事件そのものは未解決のまま。

冒頭から前半はTV業界の専門用語や、市民オンブズマン怪死事件の細かい説明などで

知識のない私には正直読み飛ばしたくなるが、ここはあとになって重要なキーとなってくるので

ぐっとこらえて読みすすめていると、だんだんハラハラ・ドキドキのサスペンス色になっていく。

私は物語の中盤で「真犯人」がわかってしまったのだが、それでも途中、(やっぱり違うかな、

あれ、でもやっぱり・・・)と読み手を惑わせる筆腕はさすが。

題名も私には初めて聞く言葉だったが、

「破線」とはTVにめぐらされる五百二十五本の線、「マリス」とは情報の送り手側の意図的な

悪意、という意味なのだそうで、ニュースなどは編集にマリスが潜んでないかチェックし、

送り手はその除去を常に意識すべきだという。


 私には以前、自分の中学がかなり校則に厳しい学校だったことで報道され、

その編集の仕方にものすごく違和感をもった経験があり、「マリス」という言葉は

知らなくても、なんとなくニュースはあまり鵜呑みにするものじゃないなぁ・・と感じていた。

それからTV番組やニュースは疑ってみるクセがついている。

“作り手の意図”というものに受け取り手はもっと敏感になり、情報をそのまま鵜呑みにすることの

危険をもっと意識すべきだとこの本は警告している。

野沢氏は10年も前から警告していたのだ。

自身もTVに携わるTV業界人という自戒の意味もこめて。

 

最後の主人公瑤子の言葉が胸に響く。

「ここに映っている私を信じないでください。」

 


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コメント 4

野沢

記念すべき100回目の記事に「破線のマリス」の感想コメントを掲載くださって光栄です^^
推理小説作家としてのデビュー作で思い出深い作品です。
気に入っていただけて本当に嬉しいです。
次回お読みになる作品に「砦なき者」を紹介します(ずうずうしくてすいません^^;)ブログでも紹介しましたが、短編集の形になってまいすので、読みやすいです。
私はこの作品の一番最初にある「殺されたい女」がすごく好きでした。ノリさんもきっと気に入っていただけると思いますよ^^
by 野沢 (2007-05-17 00:31) 

ノリ

野沢様、ありがとうございます♪
ご紹介いただいた「砦なき者」は今図書館で予約待ちしてるところです^^
正しい選択(?)だったようでうれしいです。
「破線のマリス」の続編と聞いたのですがそうなのでしょうか?
読んでみれば分かりますね^^楽しみです。
by ノリ (2007-05-17 09:08) 

おかあ

そうです!
テレビに洗脳されちゃあいかんですよ。
私もテレビのない暮らししたいです。

本のこと書いてます。映画も好きです。
どうぞよろしく。
by おかあ (2007-05-20 14:57) 

ノリ

>おかあ さん
はじめまして^^訪問ありがとうございます。
こちらこそよろしく。
あとで遊びにいきます。
by ノリ (2007-05-21 09:38) 

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